ユダヤ教からのキリスト教の自立

ヘブライオイとヘレニスタイ

ユダヤ教とキリスト教は密接にかかわりあっている宗教です。

イエスが昇天してからまもなく結成された原始キリスト教会は、ユダヤ人のキリスト教信仰者によって構成されていましたし、原始キリスト教会の中には伝統的なユダヤ教を尊重する立場の人々が多く存在していました。

ヘブライオイ(ヘブライ語を話すユダヤ人)と呼ばれる人々が、そうしたユダヤ教の伝統を重んじる人々ですが、ヘブライオイに対して、ユダヤ教から自由な立場にあった人々はヘレニスタイ(ギリシア語を話すユダヤ人)と呼ばれ、原始キリスト教の世界では双方が対立して存在していたのです。

ヘブライオイから、迫害されるようになったヘレニスタイは、信仰の世界をエルサレムのあるパレスチナ世界から、外部の世界へと広げていきますが、ヘブライオイは徹底してエルサレムを拠点としてユダヤ教を尊重しながらキリスト教の権威を保つという立場を保っていました。

 

ユダヤ戦争の勃発

このようにユダヤ教に対して異なる考え方を持つキリスト教が存在していた時代が終わりを迎えたのは、66年に勃発したユダヤ人の反乱「ユダヤ戦争」によるものです。

ユダヤ戦争とは、当時ローマのユダヤ属州総督であったアルビヌスとフロールスの失政や弾圧に対し、ユダヤ人の不満が爆発したことにより勃発したものですが、このユダヤ戦争によりエルサレムが陥落したことは、原始キリスト教の初代教会であったエルサレム教会にとっては壊滅的なダメージとなってしまったのです。

ちなみに、現在もエルサレムに残されている「嘆きの壁」は、ユダヤ戦争によって破壊された神殿の一部であり、亡国の民となったイスラエル民族の象徴でもあります。

壊滅的なダメージを受けたエルサレム教会は、その後しばらくユダヤ教的キリスト教としての力を残していたようですが、再び体制が立て直されることはなく、次第に勢力を弱めていったと考えられます。

つまり、ユダヤ戦争以降はユダヤ教から自由な立場にあったヘレニスタイによるキリスト教(ヘレニズム異邦人教会)がキリスト教の指導的役割を果たすこととなっていきました。